Brunello Cucinelli コーデュロイジャケット

Brunello Cucinelli Corduroy-Jacket01
Article

ブルネロクチネリが展開する、メタルボタンのダブルのブレザー。色はネイビーではなく黒、素材は非常に柔らかいコーデュロイを使用したジャケットになります。形がワンアンドハーフブレスト、アンコンストラクテッドフォーマルジャケットという、ブルネロクチネリ独自のダブルながらボタンを絞めなくてもジャケットが開きすぎない絶妙なシルエット。芯地をあまり入れないリラックスした着心地ながらフォーマルでもカジュアルでも着こなせる優れたジャケットになります。

アメリカンなブレザースタイルをブルネロクチネリ流の遊びの効いたスタイルでありながらも抑揚を効かせたデザインでまとめた事で様々なスタイルで着こなしを楽しめるブレザーです。基本的な着こなしは、ジャケットは黒の柔らかいコーデュロイ、トラウザーズは白でジャケット同様柔らかいコーデュロイ、合わせるシャツはこれもブルネロクチネリの上質で柔らかいコットンを使用したウエスタンシャツ。足元はスニーカーよりも柔らかく履きやすいスエードペニーローファーといったブルネロクチネリが提案するリラックスしながらも上品で崩れない遊びの効いた世界観で楽しんでいます。

ブルネロクチネリが提案するセットアップを基本で楽しみながら、もう少しラフに着こなしたい時は、ヴィンテージの501XXや、生地にジャーマンコーズを使用した5ポケットタイプのベージュで細身なコットンパンツなどを合わせて楽しんでいます。

ブルネロクチネリらしい動きやすく着やすいリラックスしたフィットながら非常にスタイリッシュにまとめたブレザーになります。
既製品なので自分の名前と購入日を書くタグがついています。MTMは購入者とここに担当した職人さんの名前が書かれます

はじめに

今回紹介するブルネロクチネリのコーデュロイのジャケットは、メタルボタンを使用した所謂ブレザーのスタイルになっています。私が初めて購入したブルネロクチネリの服であり、それまでしなかったジーンズにジャケットを合わせる着こなしをするきっかけになったジャケットであり愛着も強いです。


スマートカジュアル

3年ほど前私が所属する同好会の記念式典のお手伝いをすることになりました。記念式典のドレスコードがスマートカジュアルでしたがスーツは普段あまり着用しないので最近のものは所有しておらず20年前にタイユアタイで購入したスーツで出席すればと考えていました。そんな中、急遽ノベルティでボタンダウンシャツを作り、チャリティでメンバーに購入してもらう企画が上がります。

友人から頼まれ記念式典の受付でボタンダウンシャツの販売を担当することになります。販売する都合上ボタンダウンシャツを身につける必要があり、着用時の見本となるようスーツではなくブレザーが必要になります。

当初ブルックスブラザースでネイビーブレザーとグレーのトラウザーズを購入すれば良いと考えていたのですが、この年ネイビーブレザーが一つのトレンドになっており、私のサイズの在庫が売り切れています。

そのような状況でしたので、急遽ブレザーを探しますが、好みに合うブレザーがなかなか見つかりません。

何か良いブレザーはないかと探している中で見つけたのが今回紹介するブルネロクチネリのコーデュロイジャケットになります。このジャケットを選んだ一番の理由が、出席する同好会の記念式典のドレスコードであるスマートカジュアルにちょうど良く、ノベルティで作成したボタンダウンシャツを最高な形で引き立ててくれます。

私自身、ネイビーのブレザーと、グレーのトラウザーズの組み合わせは大好きで、普段着る機会はありませんが、若い頃、おしゃれな先輩に教わった”ブレザーは面白いジャケットで、若い人が着ると落ち着いた雰囲気で大人っぽく見え、歳をとってから着ると若く見える便利な服なので一着は持っていると良いよ”の一言が頭に残っています。

ブルネロクチネリ

当ブログで幾度か紹介しており、素材や作りのクォリティは当然ながら、展開する服全般に主張はありながらも一歩引いた控えめなスタイルや、お店のスタッフさんの気さくな対応ながら、スタイリングや着こなしに対する非常に高いプロ意識など商品から販売まで感銘を受ける、ファッションを超えた服を基準に上質なライフスタイルを提案するスタンスが大好きなブランドです。

価格帯が相当高めなので、私自身おいそれとは購入するものではありません。また価格帯から購買層の年齢層も相応に高い事も特徴です。高価格帯ながら世界中で愛されており熱心なリピーターが多い事も特徴です。そんなブルネロクチネリですが私が懇意にしているスタッフさんとの会話で出てきた言葉がブルネロクチネリというブランドのスタンスを物語っています。

非常に高価で、ブランドも有名ですが、プレスなどにも頻繁に登場しブランドイメージを作り出すブルネロクチネリ氏が普通のおじさんであり、スタイルやルックスが特別良いわけではないが、ブルネロクチネリ氏の社会活動の素晴らしさや、ライフスタイルを含めた品格があり、歳を重ねて、若い時のような体格を持たなくても、上品でおしゃれに着こなせている良い見本となっているといった言葉がブルネロクチネリの衣服に対して非常に的を得ています。

普通のおじさんでも着れる上質な服という表面的な側面だけでなく、スタイルの良い方などが着てもスタイリッシュながらどこかやりすぎない節度が品格や知性を感じさせる服でもあります。

この品格や知性というのがブルネロクチネリの本質で、最後は身につける人のアイデンティティが表現される服でありそのアイデンテティを最大限活かせる服でもあります。若い人が着ればフレッシュな若さやカッコ良さに繋がり、相応に歳を重ねた人が着れば、人生経験から来る品格や知性が表現されるとも言えます。

衣食住という言葉があり、人間の生活の三大要素でもある衣は、人が生きていくには何かを身につけなくてはいけません。もう少し深読みするとこの衣は社会性に対する個の存在を明確にするものでもあります。

巨大産業であるアパレル業界はこの社会性に対する個の存在をどう表現するかで鎬をけずっているとも言えます。ただネット時代になりこの衣に対する意識が変わり、いくつかの言葉やキーワードが最重要視され、長年かけて作り上げた伝統や衣の最適解や個性すら短期のトレンドとして消費されてしまうようになっています。

ブルネロクチネリはこの短期のトレンドから最も遠いブランドであり、高価な理由も最高の素材とイタリアにいる最高の職人が作り上げるクォリティ、人間の尊厳として働く人や関わる人に利益を還元する姿勢、関わる人の幸せを願い衰退した本拠地の村おこしを行う社会性と意義、異国である日本の販売スタッフにも同様な待遇、各店舗にイタリアの職人同様の技術を持つスタッフの配置を行い、販売した服のケアを高次元で行うことで、購入した顧客に良いものを長く大事に使っていただく事を実践しています。

これは全てにおいて非常に時間がかかります。このことが今の時間の流れとは別の時間の流れを作り出しその時間の流れが優雅な時間の流れとなっていて、ブルネロクチネリの服を深く理解するほど感じ取る事が出来ます。

目に触れたり耳にしやすい表面的な価値観ではなく本質的な価値を創造することを実践し続けていることで企業の価値や扱う商品の価値を上げています。この事は現代のマスやマーケティングとは異なる価値観でクリエイティビリティを確立した既有な企業であります。その展開する服は、品質やファッション性と同時に控えめでありながら着る人の個性を引き出す工夫が凝縮されており、その制作過程やコンセプトから一元する一つの哲学を感じる事もできます。

少し堅い話となりますが、私自身がそのような企業スタンスを含めたトータルでブルネロクチネリに敬意を持っておりこの事からブルネロクチネリの大ファンであり、少し無理をしても身につけたいと考える理由です。

ブルネロクチネリのスタイル

これまでブルネロクチネリの春夏のアイテムを当ブログで紹介していますが秋冬のアイテムを紹介したことがありませんでした。春夏のスタイルではジャケットは紹介しましたが、トラウザーズは持っていなかったので、今回ジャケットとトラウザーズをセットアップで着るスタイルを紹介しています。

ブルネロクチネリの展開する商品で有名なのは、カシミアニットがまず浮かびます。私も数枚持っていますが、カシミアニットの品質は非常に高く、軽く暖かいのは当たり前で、耐久性も高いことが挙げられます。この耐久性は車に乗ってシートベルトをするとわかります。他のカシミアニットはどうしてもシートベルトが当たる部分に毛玉が出やすく着用した後、この毛玉を取るため石川のブラシで手入れを入念にする必要があります。

ブルネロクチネリのカシミアニットは、他のカシミアニットに比べこのシートベルトのあたりで出る毛玉が出にくい耐久性を持っています。何故毛玉が出にくいのか詳しくはわかりませんが撚糸などの工夫をしていると考えられます。少し硬めのカシミアニットであればなんとなく理解できますが、ブルネロクチネリのカシミアニットは柔らかいのに毛玉が出にくい耐久性を持っています。

カシミアや上質なウールを使用したスーツやコートも展開しており、どれも非常にハイレベルな仕立てを行っているので好みの柄や着るシーンに応じて、生地の柄や生地の厚さ、セットアップか単独かで組み合わせるかなどを選択するとどれも上質で着心地が良くスタイリッシュな着こなしが楽しめます。

ブルネロクチネリは秋冬シーズンの素材で、コーデュロイを使用することも多く、上下のセットアップをコーデュロイでまとめてしまうスタイルもいくつか展開しています。ブルネロクチネリのコーデュロイの特徴は、生地が非常に柔らかく軽いので一般的なコーデュロイのイメージで着てみるとその着心地の良さに驚きます。

ブルネロクチネリは、服の色にもこだわりがあり、自然界にあるものをモチーフに配色しています。私が購入した黒のコーデュロイですが、ブルネロクチネリの黒は珍しく他に黒のジャケットを探すと見当たりません。

本来、ブレザーはダークネイビーが基本ですが、セットアップで揃えた、同傾向の生地で仕立てられた白のトラウザーズと組み合わされると黒と白での組み合わせながらフォーマルになりすぎず、少し力の抜けた程よいスタイルが出来上がります。今回海沿いで撮影して気がつきましたがマリンスタイルのイメージもあります。

この上下のセットアップに、ブルネロクチネリの程よく褪色したウエスタンシャツを合わせています。このウエスタンシャツもデニム生地などではなく通常のシャツ同様少し厚めの非常に柔らかいコットンのツイル生地で作られており、組み合わせた自身の写真を見ても違和感がありません。通常黒のジャケットにブルーのシャツを合わせることはないのですがこの組み合わせは非常にまとまりが良く洗練されています。

このように、私個人が考える以前に、ブルネロクチネリが提案するスタイルは非常に洗練されています。個々のアイテムが如何様にでも組み合わせられる寛容さを持っているのでブルネロクチネリの服を揃えて行っても着れなくなるアイテムがないこともブルネロクチネリの熱心なリピーターが多い事につながっているのではないでしょうか。

実際のブルネロクチネリの着こなし

私が古着やアメカジなどカジュアルな格好が好きなので、私が普段着用する古着などのアイテムとブルネロクチネリを合わせて着る機会も多く、少しフォーマルではない着方をするのであれば私自身このスタイルがしっくりきます。

服の考え方に、どこで誰と会うといった考え方があり、例えば近所の散歩などでは、ここで紹介しているブルネロクチネリを着る事はありません。(流石にトゥーマッチです)

ブルネロクチネリはリゾートウエアとも言われていますが、日本において海外の富裕層のようなリゾートスタイルが日常にある方は稀で、どちらかと言えば都会的な服として着られている方が大半ではないでしょうか。

私は、遊びの要素が許される少しフォーマルな席(式典やパーティー、少し格式のある食事など)では上記で紹介したブルネロクチネリが提案するスタイルをします。(このような機会は日常では少ないので少し気恥ずかしいところもあります)

もう少しカジュアルな外出(家内と銀座や表参道などの繁華街に買い物やカジュアルな食事など)である場合、全てブルネロクチネリではなくボトムにリーバイスなどジーンズや別のインナーなどを合わせるスタイルをします。このような気崩したスタイルでも崩れない寛容さをブルネロクチネリの服は持っています。

以下に着用例の写真をいくつか紹介します。私がモデルさんのような優れたルックスではないので参考にならないですが、雰囲気は掴めるのではないでしょうか。


着用例

MTMではないので細部のフィット感は完璧ではありませんが既成のままでもスタイルは綺麗で動きやすい事もブルネロクチネリの服全般に言える特徴です。このような着こなしの場合ボタンは全て止めてしまいます。
1950年代の柄が面白いコーデュロイシャツに同色のカシミアのニット帽を合わせています。そもそも50年代のコーデュロイシャツは大量生産品で、ブルネロクチネリとは根本的に考え方のことなるアイテムですが不思議と馴染みます。これは黒と白の無彩色に赤ベースの柄物というのが意外としっくりくる配色的な組み合わせになります。身につけているアイテムが全てコーデュロイというのもまとまりが良いポイントかもしれません。
ジャケット以外のシャツとジーンズは1950年代の古着ですが上手く纏まります。1950年代のシャツの特徴であるループボタンの大きなエリを出してしまうとロック的(ベースは50年代のプレスリーなどのロックミュージシャンのイメージですね)になります。トータルイメージは50年代にインスパイアされた80年代のファッション的でもあります。
ボトムだけ変えていますがリーバイス501XXなどと合わせてもまとまりが良いです。あまり主張が強くないので非常に着やすいスタイルになります。

ジャーマンコーズの5ポケットの細身のコットンパンツと合わせています。このスタイルだと60年代のアイビーリーガーのようなスタイルになりジーンズより少し上品な組み合わせになります。シャツはタックインした方が収まりが良くアイテムがカジュアルなのでトラウザーズより自然でこちらも普段着やすいスタイルになります。

ブルネロクチネリのシャツは上質なのでラフに着ても上品さが失われません。上質な日常着で非常に贅沢な時間を堪能できます。私が他に所有しているウエスタンシャツとはデザインは似ていますが全くの別物で、カジュアルながら古着やアメカジ的なラフな要素はありません。

ディテール

  • メタル製6つボタンで開閉
  • ピークドラペル
  • スリットポケット
  • チケットポケットと胸にポケット
  • 袖口には本切羽のボタンホールを施しメタル製のボタンを4つ使用
  • 全体にキュプラ製ライニング
  • ボタン式インナーポケット2つとペンホルダーポケッ
  • 後ろ身頃にサイドベンツ ドロップ 7
  • 100% コットン

組み合わせ


おわりに

今回紹介したコーデュロイジャケットが私がブルネロクチネリの服を着るきっかけになっています。この事でそれまでの服に対しての考え方を変えるきっかけになりターニングポイントになったジャケットです。

服を作り販売されたものを購入し身に付けるという一般的なプロセスだけでなくその背後にある哲学や思想について考え感銘を受け共鳴するというのは初めての事でした。過去にも他のブランドを着た時に何度か感覚的な理解はありましたが、理由を考え着ることで感じ納得したのはブルネロクチネリが初めてです。この感じるという事を意識して考えるのはスタイリングより、着心地の良さや動きやすさの方が大きくその理由が上質な素材と作りの良さに起因しています。

商品を作る側が、手間暇を惜しまず商品を身に付ける顧客を第一に考える事は当たり前に行い、その行為を敢えて表に出さず、評価は商品とサービスに委ねるといったブルネロクチネリのスタンスは一時流行ったお持て成しという言葉の真理でありこの哲学が真のラグジュアリーという言葉の実践ではないかと感じています。


Shop

私のブルネロクチネリの商品は、Brunello Cucinelli銀座店で購入しています。
フィールドジャケットの記事でも述べていますが、商品やお店だけでなくそこに関わる人も含めて最高のお店ですので、一度足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

お店については、フィールドジャケットの記事で詳しく説明していますのでそちらを参照ください。

ブルネロクチネリ公式サイト

ピックアップ記事

関連記事一覧