S-Works Tarmac SL8

Tarmac SL8の進化と言われる部分について

発売当初変わった形状から話題になったフロントのノーズコーン部分と逆に単体での性能評価が高かった空力に優れたハンドル

フロントに比べ華奢な作りのリアステー。このリアステーとシートポストのしなりが乗り心地や足あたりの良さに影響しています。
乗り心地や乗りやすさの進化
私自身が感じ取れるSL7とSL8の差に、軽さや空力面の進化の恩恵もありますが、乗り心地の良さと、足あたりの柔らかさという高性能なロードバイク特有のスイートスポットの狭さ相反した寛容さがあり、その進化が実は一番大きいのではないかと感じています。
ロードバイクの基本設計に戻った円形を基準にしたフレーム形状、リアフォークはかなり細くなっていて、軽量化とそれ以上にフレーム全体で路面の突き上げをいなす効果が乗り心地の良さと、ボトムブラケットの華奢な作りが足あたりの良さにつながっていると感じています。
フロントフォークがしっかりしてリアのフォークが細くなることで、車でいうところのフロント固めてリア柔らかくというサスペンションのセッテイングに近く、このセッテイングは弱アンダーで乗りやすいことにつながっています。
自転車なのでコイルスプリングと減衰とかで厳密に合わせたものでなく、フレームのフロントとリアの強度に差をつける事で生み出している効果になっています。これが、開発陣が意図したものか、それとも副産物なのかは私にはわかりませんが、弱アンダーのステアリング特性は確実に感じられクイックでピーキーなステアリング特性ではないことがSL8の乗りやすさにつながっています。
この弱アンダーは、下り坂のコーナーで少しスピードが上がると感じる事が出来ます。
乗り心地の良さや、足あたりの柔らかさが、長時間乗った時の疲労を軽減します。軽さもあり、空力の性能も高く、コーナーの安定感など、全体的なバランスの良さと状況変化に対しての対応力がSL7より高く、しんどい上りや、下りのタイトコーナーが少しだけ楽になったような感覚を持てます。
私のような、大して速くないライダーでも、しんどい上り坂の前や少し急な下りでブラインドのタイトコーナーなどは気持ち的に構えてしまうところがあり、その意識からSL7の時は、少し心のギアを上げる感覚があるのですが、SL8はそこまで構えていないで走るような感覚があります。
この感覚が、SL7とSL8の差になるのかなというのが乗った感覚で、この事で、疲労感が減った感覚もあります。これは普段トレーニングとして走る30Kmくらいの国道のコースで、前半は路面があまり良くない道を走り、後半1/3が路面が綺麗で見晴らしも良く、気持ち良くギアを上げるのですが、ここも風が強く、向かい風で疲れから上体が浮き気味になり失速してしまうといったのがSL7の時のパターンでしたが、SL8になり向かい風で失速しながらも、下ハンキープで走り切れます。体調やメンタルが左右するので完全にSL8の方が楽かと言えばそうではないのですが、あと少し踏ん張ろうという体力面の温存が自然に出来ていることがSL8が持つバランスの良さと、身体に優しい乗り味の恩恵と感じています。向かい風に対しては空力の進化の恩恵もあると感じます。
前半の路面があまり良くない部分は緩いアップダウンと緩い曲りで視界があまり良くなく、ざらざらで少しうねった路面、暗い道という状況なので、安全マージンをとり、少しペースを落とし、ウォーミングアップを兼ねて走ります。SL7の時はこの路面の悪さからペースを上げる気にならなかったのですが、SL8はこのような状況でも足あたりが気持ち良いのでついついペースを上げてしまいます。ただ、ウォーミングアップが済んでいないので、結構足に来てしまうといった事もあります。
プロが結果を出せるかどうかが、プロの使う道具の基準ではありますが、競技規定の厳格化により空力や軽量化だけでは差がつきにくくなっています。自転車競技は持久力に関わる競技で、世界トップレベルのレースだと200kmを超える距離を全力で走り、数時間のレースで数秒の差しかつかないシビアな世界です。
この勝負を分ける数秒を出すために、メーカーの開発陣はシノギを削っています。色々な要素がありますが、ライダーの負担を減らし疲れを残さず、体力を温存し最後にスパートをかけるというレースプランを実践出来る様な開発思想が取り込まれ、レース中に余計な神経を使わなくて良いといった、バイク単体の限られた領域での速さを構成するスペック上の性能だけではなく、ライダーが考え感じるレースプランに照準を合わせて作られたバイクかな?というのが私の感想です。(ロードバイクにそれほど詳しくないユーザーの意見です。)
プロのように、体重から姿勢まで完璧にコントロールされた状況で乗ると、バイクの空力性能は生きてきますが、アマチュアの場合そこまでの体幹や、適正体重に合わせる事も現実的に難しく、スペック上の空力性能より、前面投影面積を考えると上体をあと1cm倒した方が効果があるんじゃないかという自分のようなアマチュアにとっては非常に良くできたロードバイクというのが感想で、競技などをされていて、ある程度ポジションなどが出来上がっている方が乗ると感想も変わってくるかなというところです。
購入時、ショップの方が言っていたのですが、SL7は負荷をかけた分だけ前に進むイメージで、SL8は頑張ってないのに前に出てくれる感じですと言っていたのですが、この意見は、実際に購入し乗ると感じる事が出来ます。