Tie Your Tie Kiton

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スーツを常時着用しなくなり久しいのですが、心境の変化から、スーツ同様に履いていなかったJohn LobbのBarrosを再び履き始めています。そのような心境の変化から、スーツに合わせて履いていた黒のダービーシューズを履きたくなり、スーツをまた着ようと考えています。着用機会としては、若い時に着ていた仕事用のスーツというより、日常で着ることを考えています。

クローゼットで眠っていたスーツを取り出し久々に着てみると、当時の印象と異なった感触があります。私の感性も当時と変わっているので当たり前ですが、当時気がつかなかった新たな発見があります。

今回は、20年前にTie Your Tieで購入したKitonのスーツを紹介します。

Tie Your Tie

イタリアのクラシックなスーツやジャケットスタイルが好きな方であれば、知らない人がいないフィレンツェの名店です。イタリア一の洒落者と言われ、ウエルドレッサーとしても有名な、フランコミヌッチ氏がオーナーのお店です。

Kitonやアットリーニを始め、イタリアのクラシックスタイルが好きなら聞いたことがないくらい上質なスーツやジャケット、リガッティのシャツやロータのパンツ、マリーニやイルミーチョの靴、ネクタイや小物などをミヌッチ氏の優れた審美眼でセレクトし独自のアレンジを加え販売していました。

有名なのは、フィレンツェのサルトであるセミナーラのビスポークや、靴ではローマのマリーニのビスポーク、後に世界的に有名になる深谷秀隆氏のイルミーチョのビスポークなどがあります。Kitonやアットリーニなど既成服もタイユアタイ独自の世界観で別注しています。

オリジナルネクタイのセッテピエゲ(芯地無し7枚織ネクタイ)は有名で、他にもタイユアタイが、イタリアのクラシックなスタイルに留まらず、後のアパレルに与えた影響力は計り知れないのですが、世間のトレンドなどには左右されない、本質的な男性の装いを提案した、世界にも類を見ない、本当の洒落者が集うようなお店でした。

扱う商品の世界観が凄く、ミヌッチ氏の美意識が徹底され、価格度外視の高価な商品展開でしたが、世界中にファンを持ち、有名なところではサッカー選手の三浦知良氏も愛用していました。

日本には東京と大阪にお店があり、一時は高感度なファッションメディアや高級男性ライフスタイル誌にも良く取り上げられていましたので名前を耳にした事があるのではないでしょうか。

現在、オーナーであるフランコミヌッチ氏が永眠してしまった為、お店はなくなりましたが、名前を冠したネクタイの展開は今でも続いています。

私が愛用するタイユアタイのスーツは、タイユアタイがナポリのKitonに別注をかけたスーツになります。ちょっと燻んだダークネイビーの秋冬用の厚手のウール生地で、うっすらとグレンチェックの模様になっています。

襟はハイゴージライン、袖はマニカカミーチャ、フロントダーツ、サイドベンツ、トラウザーズは、股上が深く、ツープリーツの少し太めのテーパード、といったナポリのKitonのスタイルを、程よい身幅や、リラックスした肩周りなどのバランスを取り、生地選びも含め、ナポリと異なるフィレンツェのセンスをミックスしてまとめた仕様になっています。

参考までにイタリアのスーツスタイルは、地域により特徴があります。簡単にまとめると、都会的なローマのブリオーニ、ミラノはモード的な、アルマーニやトムフォード、ナポリは、クラシックなスタイルで、Kitonやアットリーニなど、フィレンツェは少しリラックスしたスタイルのリベラーノリベラーノなどが日本で良く知られています。

アルマーニやトムフォードはブランドとしても有名でイメージしやすいのですが、整理すると、ブリオーニやKiton、アットリーニはサルト(仕立て屋さん)が大きくなり、自社製造の工場を持つメーカーであります。ナポリのアントニオパニコや、フィレンツェのリベラーノリベラーノが、個人経営で仕立てを専門で行う仕立て屋さんでサルトと言われています。

ナポリやフィレンツェのスタイルに深くハマると、サルト(個人経営の仕立て屋さん)に辿り着きます。日本でも一時、扱いがあったアントニオパニコや、ピロッツィ、チャルディ、ソリートなどのナポリのサルトや、フィレンツェのリベラーノリベラーノは、サルトになり基本はビスポークのみの完全フルオーダーが基本になります。

サルトには、それぞれ得意なスタイルがあり、そのスタイルが自身に合うと、既成服では表現できない装いを構築できます。ただ金額面や納期の問題、生地選びなどにある程度の経験がないとなかなか思ったものにならない事や、装いをトータルで考え、着用するイメージが出来上がっていないと難しいと思います。

イタリアのスーツやジャケットを総じてクラシコイタリアと評する事があります。このクラシックという言葉は的をえていて、スーツやテーラードジャケットは元々制服から発展した男性の装いで、暗黙のルールや、変えられないディテールが含まれています。決まりやルールが固定され、その中で自己表現をするのは、作曲家が書いた譜面(譜面は作曲家の意図が残されています。)を基本に解釈や理解度を表現する音楽のクラシックと共通点があります。

Kitonは、同ナポリのアットリーニやパニコなどの英国流の構築的なスーツを得意とするテーラーに比べて、肩を少し寝かせ、身幅が広く、中庸なシルエットになっています。タイユアタイの別注はその特徴を活かしフィレンツェ流のゆったりしたスタイルで構築されています。

茶系や紫系などの、トーンを抑えつつも、色の組み合わせを楽しむネクタイを合わせるのが、タイユアタイのスタイルの特徴でした。風でネクタイが捲れてしまい返ってしまっていますが、これはタイを上手く結んでいない私のミスです。

Kitonの表示ではなく、チロパオーネと書かれていますが、Kitonの創業者であるチロパオーネ氏の名前であり、タイユアタイが別注したKitonのスーツやジャケットはチロパオーネ名になっています。この辺りの経緯や人間関係も非常に面白いのがイタリアのクラシックスタイルの特徴でもあります。

マニカカミーチャと言われる、袖付の特徴でもある、ハンガーにかけた時に皺が出ています。生地の柄がうっすらとグレンチェックになっています。

シャツは、タイユアタイのオリジナルシャツを合わせて、数枚購入しています。オックスフォード地のシャツですが、非常に柔らかく着心地も良いのが特徴です。私はシャツの襟裏についているプラスチック製のガードはしないので、購入時に外してしまいます。良いシャツは、襟先が綺麗にロールして浮きませんが、タイユアタイのシャツも襟のロールが非常に綺麗に出ます。

ネクタイの色がらは茶色の変則のドットになっています。タイの作りは、芯地がない7つ織のセッテピエゲになっています。ナポリのマリネッラもセッテピエゲのタイを展開していますが、タイユアタイのセッテピエゲの方が生地が薄く、目を詰めすぎていない為、力の抜けた感があります。私はフォーマルならマリネッラ、遊びの要素を入れるならタイユアタイを選択します。


はじめに

タイムスリップ

今回紹介するタイユアタイのKitonのスーツは、2000年代に私がリアルに身につけていたもので、20年を経て、また着用すると、懐かしさとある種タイムスリップしたような感覚があります。

John Lobbのダービーシューズを紹介する記事の写真を撮るために、長年クローゼットで寝ていたスーツを持ち出しました。折角なので当時していたスタイルの写真を撮りたいと考え、当時合わせていたJohn Lobbのダービーや、時計も当時常時着用していたオメガのシーマスターを着用し写真と簡単な記事にまとめています。

良いものは時を経ても、変わらない価値を持っていると常々考えていますが、身につける環境が変わり、しばらく身につけなかったものを、時を経て身につけても、作り手の理念を含めしっかりしたものを選ぶことで、ものが持つ素晴らしさは変わらない事を今回の撮影で再確認しました。

Tie Your Tie Kiton

サイズ感と時代背景

今回、久々に着てみて感じたスーツのサイズ感は、現代の感覚で言うと少し大きくルーズに感じます。その理由が、当時購入した際に、スーツのサイズは私の肩と胸で合わせており、通常46のところ48のサイズを選んでおり、身幅やトラウザーズが少しゆったりしています。

購入当時、スーツのシルエットの主流は、今ほどタイトなスタイルではなく、Kitonなどのクラシックなスーツは保守的でもあるので、48サイズで少し大きくゆとりがあるサイズ感でも、タイユアタイの方も、私も違和感を感じずに選んでいます。

20年前の、現代とは異なるサイズ感で合わせたスタイルを現代に持ち出してみたら、非常にクラシックなスーツスタイルに見えるのも面白いと感じています。

体型は当時とあまり変わっていないのですが、現代のスーツのフィッティング感覚で言うと46がベストになります。ただし立体的に仕立てたものでないと、肩や胸が少し窮屈に感じてしまいます。

参考までに、私の体型からスーツのサイズを厳密に合わせていくと、スーツの肩や胸周りは48ですが身幅は44ないし46、トラウザーズも44ないし46になります。(作りの良いスーツは46で肩や胸がジャストになります。)

身体に合ったジャストサイズのスーツは、非常に見栄えが良いのですが、作りが良くないと、着心地に影響することと、直立不動で綺麗でも、動くと各所に皺が出てしまい、逆に見栄えが悪くなってしまいます。今回紹介するKitonなど、イタリアの優れたメーカーやサルトのスーツの特徴に、非常に立体的に構築されています。

正面からだけではなく、斜め横からや、後ろ姿のシルエットが、それまで着ていたスーツとは全く異なるシルエットで、肩から背中、お尻と綺麗なカーブが出ており、スーツを着ることで、男性的な逞しさのようなシルエットが自然に出ていた事が購入の決め手になっています。

Kitonは生地商でもあるので、非常に上質な生地をストックしており、私のスーツも絶妙な燻んだネイビーカラーに、トーンを落としたグレンチェック柄がうっすらと入り、厚手のウール生地ながら、柔らかい着心地となっています。

当時のタイユアタイで提案された、スリーピースではなく、フロントボタンがついたカシミアカーディガンをベスト代わりに着るスタイルを出来るように身幅が少し広くとってあります。このカシミアカーディガンも同時に購入しており、冬場の寒い日はインナーに着用します。

当時30代であった私には、分不相応な感が多々ありましたが、購入後はそれまで着ていたスーツとの違いがわかり、またタイユアタイ独自のセンスが、タイユアタイの別注ではないオリジナルのKitonやブリオーニなどの高級スーツに比べて、絶妙に力が抜けた感があり、見た目やイメージに高級志向を求めない私の感性と合っていたことから、着用の機会も多く愛着を持って着用しています。

タイユアタイでの購入は、仕事でお世話になった先輩からの紹介がきっかけになっています。本当に良いものや、愛好家を産むようなものは、話の種になり、コミュニケーションツールとしても機能することを、タイユアタイのスーツを買ったことで学んでいます。ものだけではない価値を得る買い物という貴重な経験でもありました。


John Lobb Darby.

当時の私は、革靴は、外羽でダブルソールのダービーを好んでおり、所有していたJohn Lobbの靴は全て、ダブルソールの外羽のダービーでした。ドレスコード的には内羽のオックスフォードを合わせるのがセオリーかもしれませんが、あまり気にせずスーツにダービーを合わせています。

John Lobbの靴全般に言えますが、履いた時に甲が低くすっきり見える特徴があります。お店や、写真でものだけを見た印象と履いた印象が異なります。同じ英国靴のエドワードグリーンの靴の方がこのような特徴をわかりやすく出しています。私は英国靴はJohn Lobbを選択しましたが、エドワードグリーンの靴も非常に優れています。機会があればエドワードグリーンの靴も履いてみたいと考えています。

甲の履き皺はありますが、25年以上履いた靴には見えない堅牢さがJohn Lobbの靴の真骨頂とも言えます。ダブルソールなので一般的にはカジュアルなイメージですが、英国の機能美から生まれたものなので堅牢で重心が低いイメージを強く感じます。

John Lobbのカーフは非常に堅牢で、最初は固いのですが、履き込むと足に馴染み、体温が革全体に伝わることで適度な柔らかさになり、非常に履き心地が良くなります。革底も私の身体に馴染み適度に沈んでいるので、外羽が開きすぎず綺麗に締まります。

写真を撮り、改めて見てみると、全体のバランスが優れていることが良くわかります。私個人の考えですが、靴単体で見ると甲がすっきりして見えませんが、履くと甲が低くすっきり見えるのは、デザイン(ラスト)と作りの良さから生まれるものと考えています。

Omega Sea Master Ref.2532.80

アップルウォッチの登場以降、私もその便利さから、アップルウォッチを常時使用するようになります。アップルウォッチ登場以前に私は、オメガのシーマスターを常用時計として愛用していました。

購入から30年近く経っていますが、防水性能や機械精度などの性能面を含め、全く劣化しないタフさがあります。家内とともに初めて購入した機械式の時計であり、非常に愛着があります。仮に人生で一本の時計のみを手元に残すといったら、迷いなくこのシーマスターを選びます。

流石に30年前の時計ですので、何度かオーバーホールをしていますが、銀座にあるニコラスGハイエックセンター内のオメガでしっかりオーバーホールをしています。そのことで防水機能や精度も当時のまま(実際には多少の劣化はあると思います)をキープしています。あと特筆すべきは、ブレスレットが全くヨレていないので装着感も気持ち良く、細かく区切られたコマにより、調整幅の広さがあり、私の手首にジャストフィットしています。

90年代当時、シーマスターを選んだのは、防水性能を含めた高性能なダイバーウォッチの日常性、41mm径と当時は大きく感じましたがベゼルに色が入っていない事、マットなブルーダイヤル(ネイビー)が理由になります。

ベゼルに色が入らない事とフェースがマットなネイビーであった事から、カジュアルな格好は勿論、スーツの時に着用しても違和感がなかった事からシーマスターを選んでいます。

私事ながら、90年代の終わりから、2000年代初期(2001同時多発テロ以前)、ハワイにお世話になった方の奥様が居住していたので、たまに遊びに行ったのですが、アクティブだったその奥様に連れられて、実際にダイビングでも使用しています。その奥様はダイビングの上級者で有資格者であったので、海に入ると奥様に手を引かれ、結構水深の深いところまで潜っていますが、性能的に全く問題もなく、海中での視認性も高い本格的なダイバーウォッチです。

タフさという堅牢性や機能性について言えば、2010年くらいから軽いランニングとウォーキングを続けていますが、当時12キロの行程にもシーマスターを装着したまま走っています。

真夏のランニング時は結構な汗をかきます。汗の心配はありますが、防水性能はダイバーウォッチなので全く問題なく帰ったら水道で水洗いもしています。ペースを上げ腕の振りが大きくなった際に生じる振動面に関しても全く問題ありません。

この事は、ニコラスGハイエックセンターにオーバーホールを出した際に、ランニングの振動面に関してはオメガが想定する使用方法から外れた使用方法なので、精度への影響や内部部品の損傷について聞いてみたのですが、全く問題なかった事から感じた事になります。今や、アップルウォッチやガーミンにその座を譲ってしまいましたが、スマートウォッチ登場以前に、様々なシーンで大活躍した最高のデイリーウォッチになります。

ランニングやウォーキングで、基準タイムのガイドとしてベゼルをずらして使う(潜水時間と同じ感覚)といった使い方もしており、ちょっとしたツール感から機能的である事も愛着につながっています。

当時は、大きく感じた41mmのフェースですが、ドレスウォッチのフェースが大きくなっている昨今それほど違和感はありません。ベゼルに色がない事と、ブルーダイヤルにより過度にスポーティーな要素が出ずスーツに合わせても自然にまとまります。

今回合わせたスタイルは

  • Kitonのスーツ : タイユアタイ別注
  • サックスブルーのオックスフォードシャツ : タイユアタイオリジナル
  • ブラウンの変則ドットタイ : タイユアタイオリジナル
  • 靴 John Lobb Darby
  • 時計 オメガシーマスター
  • ブラウンハット エルメス バルタザール

といった形で合わせています。ハット以外は2000年代中頃にリアルにしていた組み合わせです。

ノスタルジーのような記事になっていますが、20年の時間軸で考えた事で、ものが持つ価値の本質(金額ではない感性に響くもの)を再確認しています。

Combination

非常にオーソドックスなスーツの着方で、ダークネイビーのスーツに、サックスブルーのシャツと、ブラウンのネクタイを合わせ、黒のフルブローグのダービーを履いているスタイルです。

当時タイユアタイの方から言われたのは、タイユアタイでは、ポケットチーフは刺さないのが基本と言われ、オーナーのフランコミヌッチ氏もポケットチーフはしていません。その影響からか、私もポケットチーフを刺すことは稀で、代わりに、万年筆や、冬場には胸ポケットに外したレザーグローブを刺したりします。このような、服の機能を自然に使うような所作の影響も、タイユアタイから受けています。

フランコミヌッチ氏の装いの本質が、少しだけ(この塩梅が重要)ドレッシーなものを崩して身につけるというのがあります。私個人の考えですが、その真意の中に、周りの人を引き立てるサービス精神のようなものを感じています。

わかりやすいのは、女性をエスコートするなら、男性は引き立て役に徹するといった事で、自身の装いを同席する方以上に華美にしない美学というとわかりやすいかもしれません。そのことは当然、私も自然に意識しています。

この、周りを引き立てる為に自身の装いを華美にしないという美学を、世界最高のセンスで行いながら、自身の装いも楽しめる上質なアイテムを取り揃えたのがタイユアタイというお店の本質と感じています。

この事は男性の装いの本質であり、タイユアタイでスーツを購入した事で、より鮮明に意識し、受けた影響からその後の私の装いにおいて今でも実践しています。(華美にしないが自身の装いを楽しむ感性をもらったとも言えます。)

フランコミヌッチ氏が永眠してしまい、当時タイユアタイで展開していたミヌッチ氏の哲学が随所に散りばめられた素晴らしいアイテムを、私の環境から、結局スーツ一着しか購入することができなかったことが、今更ながら非常に残念に感じています。今回記事をまとめてみたことで、タイユアタイが、何故凄かったかの漠然としたイメージを言葉にすることで、私自身がその価値をやっと理解出来たのでは?と感じています。


着用例

タイユアタイのスーツ、シャツ、タイに、John Lobbのダービー、オメガのシーマスターを合わせています。

私は、スーツは基本紺無地を好んでおり、購入したスーツの大半は紺無地です。当時のタイユアタイの既成スーツは紺無地を展開していなかったので、スーツを購入する際に、漠然とイメージしたのは、60年代のマイルスやコルトレーンが着ていたダークスーツになります。

マイルスのスーツといえばマイファニーバレンタイン(フォアアンドモアと同一日のライブ版です)のジャケット写真のイメージがあります。マイルスはダークネイビーのスーツにレギュラーカラーの白シャツと大盤ドットのダークネイビーのタイを合わせています。私の写真でサングラスをしている影響はロリンズとなります。(これは冗談ですがロリンズはヴィレッジバンガードの夜のジャケットのサングラスをしているイメージがあります。)

私が、ジャズを夢中に聴いていた学生時代は残念ながら、インターネットや有料放送もなく、映像でミュージシャンを観る機会がないので、ミュージシャンのイメージはアルバムのジャケットくらいしかなかったのですが、モダンジャズ期のジャズミュージシャンはステージに上がる際は、必ずスーツを着用しており、体格も良く非常にカッコ良いイメージがありました。

今のネット配信時代では考えられないのですが、ミュージシャンの情報やアルバム批評はライナーノーツを読み得ていたのですが、若い頃読んで感銘を受けたライナーノーツは漠然とですが覚えており、そのアルバムの聴いたイメージと被って記憶しています。

情報も今のように豊富ではなかったので、色々なアルバムを探すきっかけが、吉祥寺のメグのオーナーである、寺島靖国氏が書いた辛口ジャズノートという本が私のジャズの入り口になっています。寺島氏の視点が非常に面白く、生粋のモダンジャズファンでありながら、ギター(ジョニースミス)やアルヘイグの話など一般的なモダンジャズファンとは異なる嗜好も面白く何度も読み返しています。

音楽からの影響

余談ですが、私自身がマイルスは大好きで、特に愛聴したのが、マイファニーバレンタインからインアサイレントウェイまでのアルバムになります。ESPなどはジャズ史に残る名盤であり、マイルスのジャズに対するアプローチが、名手揃いの黄金のカルテットでより鮮明に見えるアルバムであり、私自身がマイルスのブルース感のようなものも見つけることが出来たアルバムです。

確かジャズ理論に関わる書籍でESPの解説があり、流麗でわかりやすいショーターのブルース感とマイルスの捻ったブルース感についてのフレーズの解説もなるほどというものでした。

寺島靖国氏の書籍の中で、マイルスは生涯においてストックフレーズ(ロックギターなどで言う手癖です)は一度しか使っていないといった内容のコラムを読んだ覚えがあるのですが、生粋のインプロバイザーであり、パーカー(ガレスビーの影響の方が大きいかもしれません)から伝承したジャズの本質を生涯に渡り進化させ続けたマイルスの偉大さを物語っています。

ライナーノーツに書いてあったのですが、マイファニーバレンタインとフォアアンドモアは、マイルスがチャリティーとして出演したコンサートなので、ライブ前にメンバーに今日のコンサートはノーギャラと伝え、不満を隠せないメンバー間に不穏な空気が流れたまま演奏しており、異様な緊張感とエネルギーが溢れたアルバムで、全編メンバーのテンションが尋常ではない演奏が楽しめる名盤です。(後日マイルスはメンバーにギャラを払ったそうです。)

スーツの装いに関する記事が音楽ネタに転んでしまい恐縮ですが、何気なく来ているスーツやデニムにも、私自身、文化的側面である音楽や映画などから影響を受けています。

少し大きめのスーツを着用している感じがしますが非常にクラシックなスーツのシルエットになっています。下に提示した写真を見ていただくと、横から見たスッキリしたシルエットと後ろから見た逞しく見えるシルエットからこのスーツの真意が見えてきます。

前から見た大きめに見えるシルエットが横から見るとスッキリと見えます。肩から胸、脇の絞り、お尻に向かっての膨らみが男性を男性的に見せる最大限の工夫が致されています。

私が感銘を受けこのスーツを購入するきっかけが、この後ろ姿のシルエットになります。肩のワイドさ、腰のくびれ、お尻に向かっての広がり方、ボトムの程よい太さが立体的で奥行きを感じ、男性的でクラシックなスタイルを見事に作っています。

フロントボタンを開けても、クラシックなスタイルは崩れません。タイの長さと質感が絶妙で、小剣が長く出てしまってもバランスが崩れません。
トラウザーズの太さも絶妙でジャケットを脱いでも男性的なシルエットがしっかり出ています。

股上が深いツープリーツのトラウザーズですが、腰周りの綺麗なシルエットが体格を良く見せてくれる効果があります。ネクタイが風で丸まってしまいますが、同じセッテピエゲでも厚手のマリネッラと違い、薄く生地を詰めていないタイユアタイのネクタイは、形が崩れやすい特徴があります。この特徴の良さに、人の動きでネクタイの表情が出せる事があり、細かな事ですが、所作まで含めた装いを提案したミヌッチ氏の哲学を感じます。

お尻も男性的ながっちりしたシルエットがしっかり出ており、体格を立派に見せてくれます。

正面より、斜めから見たシルエットが綺麗なのは、立体的にスーツを構築する高い技術が生み出しています。風でネクタイが捲れてしまっているのは、撮影後に気がつきました。長年着ていない事で、ネクタイの軽さを忘れていた事が原因です。


組み合わせ

  • スーツ : Ciro Paone (タイユアタイKiton別注)
  • シャツ : タイユアタイ
  • タイ : タイユアタイ
  • 靴 : John Lobb Darby
  • 時計 : オメガシーマスター Ref.2532.80
  • 帽子 : エルメス バルタザール ブラウン

おわりに

John Lobbのダービーの記事を書く為に、スーツと合わせた写真を撮ろうと考え、クローゼットに眠ったスーツを出して着てみたら、新たな発見があり記事にしています。

日々着ていた時期から20年の時間の経過がありますが、現代に着てもクラシックな魅力に溢れた優れたスーツです。合わせたシャツやネクタイを含め、クラシックで魅力的に見える理由を考えていくと、タイユアタイというお店、オーナーのフランコミヌッチ氏の哲学や、その哲学を実現するための服作りの意味が見えてきます。

購入当初は、そこまで深く考えずに着ていましたが、なぜこのスーツを選び愛着を持てたのか?の漠然とした答えが20年後に解けたような感覚を得た記事になりました。

スーツだけでなく、当時していた時計や、靴、イメージしたマイルスのスーツから、ジャズに関わる記事と内容が脱線してしまい、非常に読みにくい記事となってしまっていますが、私の漠然としたスーツに関わる装いの意味を整理出来た記事でもあります。


Shop

タイユアタイが閉店してしまっているので、ショップ情報の紹介はありません。過去の回顧的な記事ですが、現代の装いにおいても参考になる要素は多々ある優れた商品展開をしたお店であり、私の男性の装いに対する考えの方向性を示してくれたお店でもあります。

当時のタイユアタイの提案で、当時できなかった二つの宿題のうち、一つをのちに片付けています。機会があれば年月を経て片付けた宿題の答えも記事にしてみたいと考えています。

フランコミヌッチ氏への追悼と感謝の意を込めて Shinichiro Takeda