はじめに
今回紹介するMarini Oxford Shoesは、20年前に、タイユアタイで購入したスーツとともに勧められながらも購入に至らなかった経緯があります。20年の時を経て、手元にあるのですが、どこか感慨深いものがあります。
一度、愛用するものが決まると、他のものに対する興味がなくなってしまう私の性格的な問題で、私が愛用する革靴は、John Lobbのダービーであり、他の革靴を試しながらも、結局好みは30年近く変わっていません。そのことからイタリアの靴に憧れはありながらも、愛用品としての対象とならないままになっています。
イタリア靴といえば、シルバノラッタンジのような、イタリア的な、華やかさと、アズーロ(明るい紺)に合わせる、明るい茶靴のイメージがあります。
私も、一足シルバノラッタンジのホールカットを所有していますが、Mariniのオックスフォードと異なり、ジーンズにも合わせられるカジュアルさと色気のような要素を持っています。
今回紹介するMariniのオックスフォードは、色は黒であり、シャープなフォルムではないので、一般的なイタリア靴のイメージには合致しない靴になります。
リャマ革を使うことで、柔らかい靴ではありますが、履いた姿は非常にフォーマルかつクラシックであり、ローマという、政治と歴史に支えられた文化の中心地でもあり、長い歴史を持つ都市を拠点とし、顧客は、政治や文化に精通し、控えめな装いを良しとする顧客に支えられてきたことが影響していると考えられます。
特徴
非常にオーソドックスな作りのクラシックなオックスフォードシューズですが、熟練の職人さんが、全工程を最後まで丁寧に仕上げているので、作りの良さや、フォルムの美しさは別次元であります。
シングルソール
私は、ダブルソールの外羽の靴が好きで、過去に購入したジョンロブの靴は全てダブルソールの靴を選択しています。
過去に購入し、後輩に譲ったベルルッティのアレッサンドロはシングルソールでしたので、Mariniのオックスフォードは私が愛用する久しぶりのシングルソールの革靴になります。
オックスフォードがダービーに比べフォーマルに見える理由は、シングルソールと内羽に起因しています。リャマ革のシボの質感が、英国靴にはない質感ですが、上品さが失われていないのは、Mariniの靴作りの特徴を表しています。

革底はシングルソールですが少し厚めに仕立てています。写真ではわかりにくいのですが、ステッチの細かな処理やソールのコバの処理などは非常に丁寧に処理されています。
靴箱はなく、Mariniの名前が入ったフェルト状のシューケースが付属しています。
内羽
私は、外羽式の靴が好みで、所有する革靴はほとんどが外羽になっています。
脱ぎ履きの容易さや、紐を締めた際の羽の処理など、使い勝手の良さから外羽式の靴を好んでいますが、Mariniのオックスフォードは、リャマ革の柔らかさから、内羽の締まりも良く、脱ぎ履きの煩わしさとは無縁です。

内羽の処理も丁寧に処理されており、優れたラストによる形の良さから靴紐を絞めると綺麗に締まります。
内羽のオックスフォードの問題として、実際に履いた際この内羽部分が綺麗に閉まらず、開いてしまうケースが多いです。Mariniのオックスフォードは、履いた際に内羽の締まりが開きすぎない事も特徴であり、作りの良さを物語っています。
セミブローグ
John Lobbのダービーの記事で触れましたが、ダービーはウイングチップと言われるつま先を持ち、フルブローグと呼ばれています。このウイングチップをストレートチップのキャップトゥにした形状をセミブローグと呼んでいます。
良くみられる装飾が、パーフォレーションと言われる鳩目穴の装飾が打たれています。ストレートチップのキャップトゥでパーフォレーションを打たれた靴をセミブローグと呼ばれていると考えれば理解しやすいです。

リャマ革のシボとパーフォレーションの相性も良く、プレーンな革に比べ、光沢が抑えられていることが上品さにつながっています。インナーソールに、Mariniのプリントがされています。上から見ると、つま先形状が緩いスクエアトゥとなっていることがわかります。
穴飾りが随所にいたされています。現代においては、装飾的な意味合いが強いですが、元は雨天の際、水はじきを良くし浸水を防ぐために入れられたと言われています。
クラシック
オックスフォードは、ダービーに比べドレスコード的に、フォーマルな装いの足元に合わせる靴とされていますが、Mariniのオックスフォードは、セミブローグでリャマ革のシボがあるので、一般論としてのドレスコードで言えば、カジュアルな部類に分類されます。
ただ、パーフォレーションによる飾りや、リャマ革によるシボは入っていますが、Mariniという名門が長年培った歴史と格式を持っており、一例を挙げるとローマ法王であったヨハネパウロ二世の靴も仕立てている名門中の名門の靴なので、そもそもドレスコードの一般論が当てはまらない規格外の靴とも言えます。
国際社会における、立ち振る舞いといった、言葉ではない本質的なドレスコードを併せ持つ靴ではありますが、身につける人が持つ人間力や、品格も試される靴とも言えます。
どのような席にでも履いていける普遍的でクラシックな要素を持っていますが、ファッションといった要素より、歴史や文化的な背景を理解し、体現できないと履きこなすことが難しい靴でもあります。
Marini Oxford Shoesの活用
イタリア靴というと、イメージとしては、英国靴のような格式やドレスコードとは無縁の世界といったイメージがありますが、Mariniはローマの工房であり、ローマという都市の歴史や文化が色濃く反映されています。
同じローマのブリオーニが、装いにおける華やかさより、控えめな社会性を第一に考えていることと同様、Mariniの靴にも、控えめな社会性が第一に考えられており、そのことがクラシックであり最上級の品格を持ち合わせています。
ファッションの一アイテムという形で、扱うと、バランスを取るのが難しい靴です。合わせる他のアイテムも、Marini同様の哲学を持ち、そのことを理解した上で、選択し組み合わせることをお勧めします。
フランコミヌッチ氏がタイユアタイで取り扱った意味も良くわかる、靴一つにも哲学があり、美意識をしっかり持った審美眼を持つものだけが身につけることを許される孤高の靴であり、ミヌッチ氏が選ぶ他のアイテムと組み合わせることで装いが完成します。
当時、手に入れなかった理由でもある高価な価格というのもありましたが、価格以上の敷居の高さも私が購入に至らなかった理由であるということを20年を経て再確認しました。
Artigiano Ciao
今回紹介しているMarini Oxford ShoesはArtigiano Ciaoで購入しています。私がArtigiano Ciaoとの付き合いが始まるきっかけが、Marini Oxford Shoesになります。
特筆すべきは、ビスポーク専門であるMariniの靴を、デッドストックで持っており、たまたま調べ、物を見に伺ったことが、お付き合いの始まりになっています。
お店に伺い、靴を見せてもらい、デッドストックで状態が良かったこともさることながら、オーナーと色々なファッション談義をする中で、オーナーの見識に感銘を受け、Marini Oxford Shoesとともに、予定になかったKitonのカシミアコートも一緒に購入しています。
その後、お店が扱う、イタリア(ナポリが中心ですが)のサルトの古着の面白さに目覚め、過去に記事にしたFormosaのカシミアジャケットやスーツを購入しています。

Formosa
Artigiano Ciaoのオーナーの知見に感銘を受け、イタリアのサルトが仕立てた、スーツやジャケットの面白さに目覚め、購入したFormosaの記事になります。
