Dior カシミアピーコート

Dior カシミアピーコート 01
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デニムシャツの記事で触れましたが、後輩から言われた”還暦でDiorの服をさらりと着ていたら素敵だよね”の一言に乗せられて今年は、Diorのアイテムを何点か購入しました。メインのアイテムが今回紹介するカシミアピーコートになります。

ピーコートやダッフルコートは好きなアイテムですが、今の自分に合うものを探すとなるとなかなか良いものが見つかりません。今回紹介するDiorのカシミアピーコートは一般的なメルトン生地のピーコートに比べ、素材がカシミアのメルトンで作られており生地もしっかりしながら厚すぎないので非常に軽く暖かく本格的な冬に大活躍するアイテムになります。

ちょっと見た感じは、少し細めのピーコートにしか見えません。様々な組み合わせをしていくとこのピーコートのデザインや細部の作りのこだわりが見えてきます。
左胸の内ポケットのところにタグがついています。他のアイテムと異なり外部にDiorロゴがないので、目の肥えたファッション関係者とか以外は着ていてもDiorのものとはわからないと思います。

はじめに

ピーコートは男性ファッションの一つのアイコンであり、非常に着やすく、あまり難しいことは考えずに着てもまとまりやすいアイテムです。今回紹介するDiorのカシミアピーコートですが、実際に着てみるといくつかの特徴があり、洗練された着こなしをしようとすると少し難易度が高くなるアイテムであります。ただポイントを抑えると非常に洗練された着こなしが出来る優れたピーコートであるのでその辺りの話題を含めて紹介したいと考えています。


Diorの世界感

Diorを着こなすという意味に、世間一般でイメージする高級ブランドの服を着るというより、細身で非常にストイックな服ですので、Diorを着るためのスリムな身体を持ち、無駄を排したミニマルな世界観を自身の感性と合わせていく必要があります。

デニムシャツの記事で書いたのですが、シャネルやフェンディを率いたモードの帝王であるカールラガーフェルドが40キロもの減量を行い身につけた逸話があるように還暦に近い歳ともなると崩れた体系をまずはなんとかする必要があります。

私自身は体型的に着ることが出来ないという第一関門はクリアしていますので後は着こなすという意味のセンスも磨いていく必要があります。このセンスというのも、センスが良い悪いというより、私が従来好きなものと異なるものを許容出来るか?という事でもあります。

私以外の方でもピーコートもスリムながら着れないということはほとんどないと思いますし、かなり細めに見えるスリムフィットのブラックデニムも、見た目の印象ほど細くはなく、私は通常ジーンズのウエストが30inchで、Diorのブラックデニムも30inchを履いています。

普段履き慣れたリーバイスやLeeのストレートのデニムに比べたら細身ではありますが、ウエストは少しあまり気味で腿周りも問題なく、ふくらはぎのあたりが細く感じるくらいで、細くて履きにくいとは感じません。

このデニムの細く見える割に、実際に履くと細さが気にならない理由に股上の深さがあります。この辺りの工夫もトップメゾンらしいこだわりであります。

Diorのデニムシャツで述べた、Diorの服が持つ細身のシルエットが繊細でナイーブな少年的な要素を持っており、これが永遠の若さを表現しカールラガーフェルドの感性に触れたといった話をしています。(あくまで私見です)

私自身が永遠の若さを欲しいと考えた事はありませんでしたが、Diorのピーコートと一緒に購入したスリムフィットのブラックデニムを身につけた写真を見てみると素の自分より若々しく感じられるイメージがあります。

少年ぽさやナイーブさは流石に私の写真では感じとる事は出来ませんでしたが、シルエットだけを考えるとDiorのイメージで思い描く繊細なイメージは感じ取れます。

スリムでタイト?

今回私が購入したピーコートとスリムフィットのデニムは、エディスリマン時代に構築された世界観を継承しています。そのためかなり細めに出来ているため、人によっては着る事が難しかったり、似合わないという事もあると思います。

私自身も同世代の平均から考えると細めの体型ながら肩周りや胸周りは平均的な体型より少しありますので、Diorが提案する繊細でナイーブな印象がある体型かといえばNoであります。

Diorのイメージに、スリムでタイトなシルエットで、窮屈な服を我慢して着るような印象があります。実際に着用するとフィット感はタイトながら、動きにくさや、細くて無理して着ている感覚はありません。

記事後半の着用例を見ていただくとわかると思いますが相当スリムなイメージのあるスリムフィットのブラックデニムもシルエットに適度の皺が出ている事が確認できると思います。(計算された絶妙なしわの出方が足をスッキリ見せています)

実際のDiorのピーコートの着こなし

これまでの私のスタイルにはない、黒のピーコート、黒の細身のデニムといった、色やスタイリングにモード感が強いスタイルなので、身につけるとなると少し抵抗感があります。

Dior銀座店で試着をした際、鏡を見ると黒の細身のデニムが少し細すぎるかなと感じましたが、古着になれた眼が、スタイルに対してある種のバイアスを産んでいるのではと考えて、冷静に見てみる為にスタッフの方と友人に意見を聞くと、その時履いていたLee101Zとピーコートの組み合わせよりスタイルが良く見えるとの意見でした。

私的には、この細さは少し恥ずかしいかな?とその時は感じましたが、2人の意見を尊重しこのスタイルをしてみることにします。

今年は、例年より気温が下がるのが遅く、なかなか冬物を身につけることがなく、12月に入りやっと着るようになります。一度後輩と表参道で会う機会がありその後輩に当日着ていた黒のピーコートと黒のスリムフィットデニムの組み合わせの感想を聞いてみます。この後輩は高身長で細マッチョな体型を活かしTomFordを着こなし男性的なカッコ良さをさりげなく品良くまとめる抜群のセンスを持っています。

後輩曰く、先輩の古着愛のようなものは十分理解しているけど、正直このスタイルの方が上品で洗練されていて先輩には似合うと思うとの意見をもらいます。今日の先輩のスタイルは先輩の身体に合っているし、先輩から自然に出ている内面的なオーラのようなものが服に負けておらず、難易度が高いDiorのストイックなスタイルもこなれて見えるとの事でした。

これは私の感想ですが、後輩の意見から出た話の理由に表参道から青山界隈は、ファッション関係の方も多くお洒落な方が多い土地柄このDiorの上下は街並みにも合っているような気がしますので環境の中から出た意見とも取れます。

土地を考えると、原宿方面は古着をおしゃれに着る方が多くそのような土地では古着もありかなと考えます。例えば場所を銀座に移すと、私の持っている服の中でブルネロクチネリの服が合っているような気もします。これは服が持つ社会性のようなものを身近に感じているとも言えます。

Diorの持つモード感は私の好き嫌いを超越した世界観を持っており、私自身が少し恥ずかしいかなと感じる着こなしが、みる人が見ると非常に洗練されて見えているという事でもあります。このような私ではなく第三者の意見と私自身の感覚の相違のような感覚を受け入れていく事も自信のセンスを磨く要素でもあります。

感性や好みを超越した完成された世界観を実感

私が古着やアメカジを好む理由に、おしゃれに気を取らすぎていない服の着方のようなものがあり(自然体とも言えます)、ある程度ものが揃うと何も考えず、目の前のものを手に取り着るだけでスタイルが出来上がってしまう事があります。

このスタイルは、若い時から変わらず、非常に理にかない効率的でもある服の着方とも言えます。この考え方の基本は古着やアメカジ的なアイテムだけでなく、ブルネロクチネリや、その他所有しているトップメゾンの服を着る時でも変わりません。

このような考え方で服と接しているので、特定のブランドのものを全身身につけるということはほとんどしたことがありません。セットアップ的な組み合わせはありますが、何か必ず別のアイテムが混じっています。

その組み合わせに、特にこだわりが強いものや好きなものを自然に必ず交えていくような服の着方が基本にあります。(高校生のお気に入りの一張羅のようなものですね)これが古着であったりしています。

ブルネロクチネリは、ブルネロクチネリを着るという意識を持たずに着ています。今回Diorを着て感じた事は、Diorを着るという意識がどこかにあり、その意識を私が敬遠していたのかもしれません。これは慣れの問題で、時間が経つとなくなるのかもしれませんがこの感覚も初めて感じた感覚です。

今回のDiorのピーコートとスリムフィットデニムの組み合わせで感じた事は、基本あまり着方を考えないで服を選ぶという着方や、イメージで服を敬遠してしまうという感覚を超越した独自の世界観を持った服であるという事でした。

これは従来の私の感性で感じる、Diorの服が持つ世界観は、おしゃれであるが私が身につけるものではないと考えていた私の先入観を超えているものであり、ある意味Diorが構築した世界観に私自信が飛び込むことで成り立つ世界かなと感じたのが今回Diorの服を着てみて感じた感想になります。

記事用に自身が着用した写真を撮って見てみると、後輩が言っていた意味がなんとなく理解できます。Diorが過去から継承し現在でも残っている男性ファッションの世界観は、こういう事だったと感じた出来事でした。

当記事で紹介したエディスリマンが構築した世界観は現在のDiorでも継承されていますが、現在のDiorはその他の要素も持っており、独自の世界観を表現しています。カジュアルに見えても独自の世界観を構築しているのは流石にパリを代表するトップメゾンです。スリムでミニマムな服が好みでなくてもDiorの世界観は楽しめますので興味があったら是非身につけてみることをお勧めします。

以下に着用例の写真をいくつか紹介します。私がモデルさんのような優れたルックスではないので参考にならないですが、雰囲気は掴めるのではないでしょうか。


着用例

私自身のスタイルが良いわけではありませんが、Diorのデニムとピーコートを合わせるだけでなんとなくミニマムでストイックなDiorの世界観が出ています。色も黒がベースにインナーとニット帽が中間グレーの無彩色の組み合わせになります。インナーのニットはブルネロクチネリのスエット風のカシミアニットを合わせています。本来はもう少し身長が高くスリムな方が着るとDiorが持つ良さが増すと思います。この組み合わせは非常にモード的で最近の私が全くしなくなったスタイルです。昔から黒を基準にした組み合わせはカッコ良いなと考えますが、自分にはあまり合わないのではないかと考え敬遠してきていますが、今回着てみたことで黒の持つ魅力を理解出来たような気がします。
私がイメージするDiorのシルエットが細長い長方形のシルエットです。ピーコートは直線的なカッティングで仕立てた細身のA体ですが、一般的に言われるA体ではなく脇からウエストあたりが少し立体的なXに見えるよう仕立てられています。他にも様々な工夫と技が散りばめられておりこの辺りの作りのこだわりがトップメゾンのクォリティでもあり、他のブランドが真似のできない世界観を作っています。エディスリマンが作り出した細身でミニマルなデザインは今のDiorにも受け継がれていて、どこか華奢でナイーブに見えるデザインは健在です。
ピーコートを着てボタンを閉めていると細身で繊細なイメージがありますが、ピーコートを脱ぐと体型が普通に見えます。ピーコートの作りと仕上げが視覚的にスタイルをまとめてしまうことが良くわかります。
ボトムだけ変えていますが細身のストレートのコットンパンツと合わせてもまとまりが良いです。このスタイルはあまり主張が強くないので非常に着やすいスタイルになります。50年代のLee101Zも合わせてみたのですが、ボトムが太く感じ合わない事はないのですが、細身のパンツのようなシルエットは作れませんでした。前回のブルネロクチネリとの違いは、ブルネロクチネリは他のアイテムとの組み合わせを容認する寛容さを持っていますが、DiorはDior的なミニマルなアイテム以外は受け付けない孤高なこだわりを持っています。これがブルネロクチネリやDiorなど世界的なトップメゾンの考え方の違いとも言え、この違いを選択するのは個々の好みや必要とする世界観を良く理解する必要があるとも言えます。このことでその人に合ったスタイルが出来上がっていきます。

Diorのピーコートの凄さに合わせるパンツによってシルエットが異なって見える事があります。この組み合わせは上記のDiorのブラックデニムで合わせたスタイルのミニマムさに比べ、上半身のシルエットが普通に見えます。

Diorの凄さにピーコートを着ると細くというか少し華奢に見えるのですが、ピーコートを脱ぐと普通の体型に見えます。

もう少し、Diorが提案する世界観から外していきます。ボトムのベージュのコットンパンツにトムフォードの薄いグリーンのカシミアニットを合わせてストールを巻いて、靴はジョンロブのバロスを合わせています。このようなスタイルにするとDiorの世界観から一般的な上品さにイメージが変わります。ミニマルなだけでなく組み合わせにより上品に見えるのは、作りの良さとモード的な仕掛けのバランスが絶妙でやりすぎていない事による副産物とも言えます。

黒に淡いパステルグリーンを合わせていますがこの雰囲気が、80年代に流行ったBCBG的でもあります。

インナーやボトムの組み合わせでシルエットが変わって見えます。ボトムにベージュのパンツを合わせるこのスタイルの方が、普遍的で上品なイメージになるので日常的に着やすいスタイルです。

ディテール

  • ノッチドラペル
  • サイドウェルトポケット
  • 内側にウェルトポケット
  • Dior刻印入りホーンボタン
  • Diorジャカードの背裏地と袖裏
  • バックベント
  • カシミヤ100%、裏地:キュプラ100%
  • イタリア製

組み合わせ

  • ピーコート : Dior カシミヤピーコート(黒)
  • ニット(グレー) : Brunello Cucinelli スエット風カシミヤニット
  • ニット(グリーン) : Tom Ford カシミヤニット
  • Denim : Dior スリムフィットデニム
  • 5ポケットコットンパンツ : Visvim
  • 帽子(グレー) : LEUCHTFEUE
  • 時計 : Rolex Day Date (1803 1969)
  • サングラス : Tom Ford
  • ベルト : Hender Scheme
  • 靴 黒スエードワークブーツ : Visvim
  • 靴 茶色Uチップ : John Lobb バロス

おわりに

今回、後輩から出た”還暦でDiorの服をさらりと着ていたら素敵だよね。”の言葉がきっかけで購入し着てみたDiorのアイテムですが、私の好みや感性を超越した世界観を持っており、私の服に対しての考え方の引き出しを大きく変えてしまうインパクトのある出来事でした。この世界観は20年前に先進的な形で世界に発信されたものですが、20年を経て私はその本質にやっと触れたとも言えます。これはエディスリマンの凄さを理解するのに20年もかかったとも言えます。

昔チャックベリーが、敬愛するチャーリークリスチャン(ジャズギターというかビバップの始祖。この人達のアフターアワーセッションからビバップが生まれたというジャズ史のレジェンドでもあります。)の曲だったか気に入ったフレーズだったかを弾けるようになるまで40年かかったというインタビューを読んだ事があるのですが、感覚的には似たものを感じています。(キースリチャードがプロデュースしたチャックベリーの映画の際にアメリカのギター雑誌が行ったインタビューの一説だったと思います。)

感性や概念的な記事となっていますが、今回紹介したDiorのカシミヤピーコートはアイテム単品としても非常に優れておりスタイリングはもちろんのこと、生地や仕立てのクォリティも超一流ですので、着心地や軽さは当たり前のアイテムです。ただそこにDiorの世界観が入っていますので、他の一般的なピーコートに比べ独自のスタイリングを持っており、厳密に組み合わせをしていくと、合うアイテムと合わないアイテムの差が極端に出やすく、合わせたアイテムによっては悪くはないけどちょっと違うという感覚を持たれるのではないかと思います。(私のLee101Zとの組み合わせです)

私自信が、好きなもので身を固めてしまい、どこか斬新さや新しいものを自身のスタイルの中に取り入れることをあまり積極的にしなかった事が良く理解出来た出来事です。

過去に斬新さといえばカルぺディエムやキャロルクリスチャンポエル、初期のマルジェラなどは普通に着ていましたが、何故Diorを選べなかったかの理由を考えると、上記のアイテムは古着的な要素や過去からある定番的なものの再解釈の要素が強く、そのような要素に対して私は抵抗感がなかったとも言え、Diorの黒ずくめでミニマルな斬新さを持ち、他との組み合わせを拒む統一された世界は私の感性には触れなかったとも言えます。

ファッションにおいても食わず嫌いはせず、試してみることの大事さを感じた出来事でした。

今回、Diorの服を着てみて、世界観に触れ、パリコレのトップに君臨するようなモード感の底力のようなものを感じ、その素晴らしさを感じていますので、機会をみて他のアイテムも着てみたいと考えています。


Shop

私のDiorの商品は、銀座SIXにあるハウスオブディオールギンザで購入しています。

スタッフの方も非常に親切でキャリアが長くスタイリングのアドバイスも的確です。興味のあるものや関連するものの提案も的確でありDiorが考える洗練された着こなしをトータルで提案してくれます。

メンズだけでなくレディスも充実しており、バッグなどの小物や化粧品までトータルでコーディネイトしてくれますので、休日奥様と足を運んでみたらいかがでしょうか。

2026SSから新しいデザイナーがコレクションを発表しましたが、メンズファッションの原点に立ち返るようなコレクションでありそこにDiorの世界観を絶妙に入れています。ここ10年くらいトップメゾン全体が、非常にカジュアルで着崩したスタイルを模倣していたのですが、普遍的な男性服に原点回帰しているようなコレクションで非常に楽しみです。

お店については、デニムシャツの記事でも詳しく説明していますのでそちらも参照ください。

Dior公式サイト

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