TOM FORDのコーデュロイシャツ
TOM FORDのアメリカンヴィンテージの再構築に感銘
はじめに
TOM FORDというと、セクシーでラグジュアリー、360度どこから見ても隙がなく完璧なスタイリング、イメージする人物がダニエルクレイグ扮するジェームズボンドという感じで、正直私には無縁のブランドでした。
そんな私がTOM FORDの服に興味を持つのは、ベルルッティやC Diemを譲った後輩が、TOM FORDが大好きでその彼のおすすめでショップを訪れた事がきっかけでTOM FORDの一般的なイメージの先入観が変わり、俄然魅力のある服を作っていることに気が付きます。
そこで、手に入れたのが今回紹介するミリタリー柄のコーデュロイシャツになります。このコーデュロイのミリタリー柄のシャツに詰まった、TOM FORDのアメリカの服飾史に対するリスペクトと深い愛情を紹介いたします。
TOM FORDについて
私の先入観
TOM FORDと言うと、ピークドラペルのスーツを思い浮かべるのではないでしょうか。このピークドラペルは胸に視線を持ってくるように計算されていて、胸や肩が逞しく見えるようになっています。
私の見たTOM FORDの服の特徴に、第三者の視線をどこに持っていくかという工夫が随所にあり、後輩が所有している、シングルのレザーライダースジャケットを例にすると、身丈は短く、袖は長く、襟は小さく、ファスナーは極太といった特徴がありますが、このフォルムにより、胴体を構成する要素を視覚的に小さく見せて足を長く見せるといったフォルムの工夫がなされています。
ただ、力の抜けた服が好きな私にとって、TOM FORDの完璧に計算されたスタイリングは緊張感が高く、カッコいいのですが、私が身につける服ではないと言うのがあって、自分で着る事はありませんでした。後輩は私より、一回り近く若く、身長も高く、スタイルも良いので、この緊張感のある服が良く似合います。
先入観を変えたシャツ
そんな中、春夏物で、アウターが見たいという後輩と一緒にTOM FORDを訪れて、色々見ている中で、このミリタリーのシャツが目につきます。近づいて、手に取ってみると、コーデュロイのシャツで、柄がミリタリーとなっています。古着が好きな私にとって、50’sのコーデュロイのシャツは大好きなアイテムなので俄然興味が湧いて来ます。
店員さんに声をかけて、試着をお願いします。店員さんが、私の体型を見て、合いそうなサイズを持って来てくれます。手に取り、試着をしてみます。試着をすると、流石TOM FORD、スタイリングは完璧ですが思っていたような身体のラインを強調するようなシェイプはなく、シャツながら、アウターのような感覚で羽織れてしまいます。ほどほど余裕があるので、動きの窮屈感はないのですが、身丈や袖丈が完璧で、スタイルが良く見えます。コーデュロイのシャツながら、スタイリングはジャストフィットの迷彩柄のフィールドジャケットのように見えます。
ミリタリーのフィールドジャケットが大好きな私はこのフォルムが気に入り、結局このシャツを購入します。このシャツの面白さに、50’sのコーデュロイのシャツをオマージュしながら、その中に迷彩柄のジャングルファティーグの要素を落とし込み、両方の良さをいい塩梅でミックスしています。当然ながら、触った感は、まさにコーデュロイの感触で、身につける前はコーデュロイのシャツに見えますが、身につけると、ジャングルファティーグでは余る身幅や袖が、ちょうど体にフィットしたミリタリーのシャツに見えます。
私は古着が好きなので、50’sのコーデュロイシャツも、ジャングルファティーグシャツも持っていて愛用しています。身幅や袖がもう少し細ければ、現代的なスタイリングでもカッコ良く着れるかなと常々考えていて、サイズ直しで、この辺りを変えてしまうかなと何度も考えています。ただ元の製品へのリスペクトがあり、当時のまま着る事が一番良いとの結論になり結局そのまま着ていますが、時折、サイズ直しの願望が頭に浮かびます。
TOM FORDの服飾史に対するリスペクトに感銘
今回、TOM FORDのミリタリー柄のコーデュロイシャツに触れて、このあたりの願望を見事に解決していてそのことが、セクシーでラグジュアリーだけでなく、アメリカの男性ファッション史にあるアイコンのような商品をリスペクトしながら、現代的にモディファイして提案するTOM FORDの懐の深さに感銘を受けました。考えてみれば、TOM FORD自身アメリカ人で、子供の頃から慣れ親しんだアメリカの服に特別な思いがあるのも当然なのかもしれません。
後輩は、モールスキンで仕立てたブラックデニム(デニムではないのですが)のGジャンを選びましたが、このGジャンも、古いLeeのGジャンをモチーフにしています。これをモールスキンで、仕立ててしまう遊び心も流石だなと感心してお店を後にし、後輩と食事をしたのですが、ここで話をしたような、TOM FORDの服にあるバックボーンのストーリーに話が弾みました。
※考えてみたら、この後輩に、サンローラン時代のTOM FORDがデザインしたカーキ色のGジャンを私が持っていて、過去に譲っていて、そのスタイリングのかっこよさに後輩はTOM FORDが好きになるきっかけとなっています。過去の事で忘れていました。
着用例
ディテール
- 表地(コーデュロイ)コットン 100%
- 裏地コットン 100%
組み合わせ
- コーデュロイシャツ : TOM FORD サイズ39(US表記)
- Tシャツ風ヘンリーネックのニット : TOM FORD サイズ46
- Denim : Levi’s 501XX53モデル ウエスト30inch:レングス32inch
- Boot : White’s
- 帽子 : Ten-C
- 時計 : Rolex GMT Master 1675(1964)
- サングラス:TOM FORD
終わりに
後輩から紹介されて来店したTOM FORDの何気なく見たコーデュロイのシャツが手に取ったら、非常に魅力的で、着たらびっくりのこだわりの一品で、これまでのTOM FORDに対する先入観が一気に変わりました。
食わず嫌いは良くない事を反省し、なるべくお店にいってものを良く見ることの大事さを再確認した一件でした。他にも魅力的な商品が沢山あり、機会があれば着てみたいと思えるような素晴らしい世界観があるのは流石TOPメゾンで、年をとり、しばらく興味がなかったモードブランドの底力を感じました。
このコーデュロイシャツに合わせようと、黒のヘンリーネックの薄手のニットTシャツと、クルーネックのニットTシャツも購入し、これもまた素晴らしいTOM FORDの世界観が反映されたものなので、別項で紹介できればと思います。
Shop
今回、紹介したミリタリー柄のコーデュロイシャツは有楽町の阪急メンズ館内のTOM FORDで購入しています。
阪急メンズ館は、有名なトップメゾンから、ひねりの効いた面白いブランドまで色々なお店が出店していますので、館内を散策すると、好みのものが見つけられると思います。また、トップメゾン直営のフラッグシップストアは素晴らしいのですが入店の敷居がどうしても高くなりがちで気軽に入りにくい雰囲気があります。阪急メンズ内のお店はデパートのコーナー的な感じで、気軽に覗きやすいので、興味のある商品があったら覗いてみてはいかがでしょうか。
阪急メンズ内のTOM FORDは、シックな店内に、スーツからカジュアルウェア、シューズや下着まで揃っています。スタッフの方も、一見声をかけにくいような感じもありますが、声をかけて商品を見せていただくと親切に商品の説明をして、試着もゆっくり出来ます。
お客さんにあったサイズや、似た商品の比較をしながらスタイルを提案してくれます。非常にスタイリッシュでカッコいい世界観を持ちながら、私のような古着が好きなおじさんでも納得のカジュアルウェアも展開してますので銀座に来た際は、足を運んでみてはいかがでしょうか。